最近、耳にすることの多くなった「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉ですが、SDGsは17の目標でできているということをご存知でしょうか。
実は、17個それぞれの目標にはわかりやすいキャッチコピーがついています。
このブログでもSDGsについて、たびたび紹介しているのですが、今回は17個それぞれの目標のキャッチコピーを日本語と英語で見比べてみたいと思います。
SDGsの目標一覧(日本語・英語)
目標 | 日本語 | 英語 |
---|---|---|
1 | 貧困をなくそう | No poverty |
2 | 飢餓をゼロに | Zero hunger |
3 | すべての人に健康と福祉を | Good health and well-being |
4 | 質の高い教育をみんなに | Quality education |
5 | ジェンダー平等を実現しよう | Gender equality |
6 | 安全な水とトイレを世界中に | Clean water and sanitation |
7 | エネルギーをみんなに そしてクリーンに | Affordable and clean energy |
8 | 働きがいも経済成長も | Decent work and economic growth |
9 | 産業と技術革新の基盤をつくろう | Industry, innovation and infrastructure |
10 | 人や国の不平等をなくそう | Reduced inequalities |
11 | 住み続けられるまちづくりを | Sustainable cities and communities |
12 | つくる責任 つかう責任 | Responsible consumption and production |
13 | 気候変動に具体的な対策を | Climate action |
14 | 海の豊かさを守ろう | Life below water |
15 | 陸の豊かさも守ろう | Life on land |
16 | 平和と公正をすべての人に | Peace, justice and strong institutions |
17 | パートナーシップで目標を達成しよう | Partnerships for the goals |
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日本語は短い文のようになっているのに対し、英語は単語ベースなのが面白いです。
ちょこっと解説
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それぞれの目標について、少しだけ解説してみたいと思います。なお、私は英語が得意(TOEIC925点・英検準1級など)ですが、ネイティブではないので、その点はご了承ください。
目標1「貧困をなくそう」
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「貧困をなくそう」は、 “No poverty” を訳したものです。
poverty には「貧乏」や「貧困」といった意味があります。
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ちなみに、poverty の形容詞形は poorで、日本語でも「ワーキングプア」やドラマ「リッチマン、プアウーマン」などで馴染みのある単語です。
目標2「飢餓をゼロに」
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「飢餓をゼロに」は、 “Zero hunger” を訳したものです。
hungerは「飢餓」なので、この目標はストレートに訳されたことがわかります。
一点気になるのは、目標1は “No” poverty だったのに対し、目標2は “Zero” hungry となっているところ。
これ実は、文法(語法)的には、 “No” あるいは “Zero”どちら でも同じ意味で使えます。
どうして1と2で違うのか、ということについては推測でしかありませんが「同じ単語の繰り返しを嫌った」のではないかと私は考えています。
目標3「すべての人に健康と福祉を」
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「すべての人に健康と福祉を」は、 “Good health and well-being” を訳したものです。
なんとなくwell-being が「福祉」を指しそうですが、実はそう単純ではありません。
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well-beingは、身体だけでなく精神面や社会面においても満たされた状態のことで、日本語では「幸福」という言葉で解釈されることが多いようです。
日本語の「福祉」という言葉は、公的な援助を連想させるので、必ずしもwell-being と結びつけられるわけではないのですが、達成のために公的援助が必要なのは間違いないのでこの訳になったのではないかと思います。
目標4「質の高い教育をみんなに」
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「質の高い教育をみんなに」は、 “Quality education” を訳したものです。
quality は日本語でもおなじみの「クオリティー(品質)」ですが、ここでは形容詞として「質の高い、高級な」の意味を表します。
それから、さきほどの目標3「すべての人に健康と福祉を」にも関係しますが、「みんなに」や「すべての人に」に相当する語は英語の中にありません。
しかし、SDGsが「誰ひとり取り残さない( No one will be left behind)」というキャッチフレーズを掲げているので、個別の目標に「みんな」に相当する語を挿入しても問題はないと考えられます。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
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「ジェンダー平等を実現しよう」は、 “Gender equality” を訳したものです。
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gender は性別という意味ですが、より正確に言うと「社会的性別」と訳されます。
これは生殖機能などに基づく性別(sex)とは違って、社会的に生じる性別を指します。
たとえば、平均して男性のほうが体が大きいという事実があります。
このこと(男性のほうが体が大きい)自体を平等にするのは無理がありますが、力で劣る女性でも同じように社会で過ごせるようにしよう、ということは可能で、これをジェンダー平等と呼びます。
目標6「安全な水とトイレを世界中に」
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「安全な水とトイレを世界中に」は、 “Clean water and sanitation” を訳したものです。
sanitation というのは「衛生」や「衛生的な設備」を指す言葉です。
したがって、直接的に「トイレ」を指しているわけではありません。(ただし、sanitation は下水を連想させるので、全く見当違いなわけではないです)
キャッチコピーとして子供でもわかりやすくという点を考慮した訳といえると思います。
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
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「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、 “affordable and clean energy” を訳したものです。
ここで注目したいのは、affordableという単語。
学生時代に I can’t afford to buy a car. (車を買う余裕がない)といった例文を覚えた方も多いのではないでしょうか。
affordable は金銭的に余裕がある、手頃な、といったイメージのある単語です。
ここでも英語にはない「みんな」という表現がありますが、手頃であればみんなが使えるという意味だと考えられます。
目標8「働きがいも経済成長も」
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「働きがいも経済成長も」は、 “Decent work and economic growth” を訳したものです。
decentという単語は非常に日本語に訳しづらい単語です。
辞書では「きちんとした」「まずまずの」といった訳が紹介されていますが、この目標を「きちんとした仕事と経済成長」と訳したら違和感があると思います。
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この「きちんとした」「まずまずの」というのは社会的に認められたということではなく、自分自身が納得感を持っていることを指していると理解するのが良いと思います。
そう考えると「働きがい」という表現はdecent のニュアンスをうまく訳した表現だと感じます。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
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「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、 “Industry, innovation and infrastructure” を訳したものです。
実は日本語訳は、この英語だけでは説明ができません。
この英語には続きがあって、
Build resilient infrastructure, promote inclusive and sustainable industrialization and foster innovation.
(回復力のある社会基盤を作り、包摂的で持続的な産業と、技術革新を促進しよう)
という部分まで理解して初めてつけることのできる訳だと感じています。
目標10「人や国の不平等をなくそう」
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「人や国の不平等をなくそう」は、 “Reduced inequalities” を訳したものです。
reduce は減らす、inequalities は不平等ですが、なぜか日本語では「人や国の」という言葉が足されています。
先ほどの目標9と同様、この目標も続きを見てみます。
Reduce inequality within and among countries.
(国の中や国の間での不平等を減らす)
人と明示しているわけではないですが、国の中の不平等=人の不平等と捉えたのではないかと考えられます。
目標11「住み続けられるまちづくりを」
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「住み続けられるまちづくりを」は、 “Sustainable cities and communities” を訳したものです。
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sustainable はSDGsのSにもなっている言葉で「持続可能な」という意味があります。
これまでの目標では、英語にない単語が日本語で補われていることが多かったですが、この目標に関しては cities and communities が「まちづくり」とまとめられているのが特徴的です。
目標12「つくる責任 つかう責任」
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「つくる責任 つかう責任」は、 “Responsible consumption and production” です。
responsibleは「責任のある」という形容詞なので、直訳は「責任のある消費と生産」です。
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なぜか日本語では順序が入れ替わっていますが、これは「つくる→つかう」のサイクルのほうがなじみやすいからかもしれません。もしくは英語の方が「消費者から変わっていこう!」という気持ちの表れという可能性もあります。
目標13「気候変動に具体的な対策を」
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「気候変動に具体的な対策を」は、 “Climate action” を訳したものです。
Climate は「気候」であり、一語で気候変動を表すわけではない(気候変動は “climate change”)ですが、気候変動を指していることは明らかなのでこう訳したと考えられます。
また、actionは「対策」ですが、「具体的な」に相当する語はありません。
そこで、この目標についても続きを見ていきます。
Take urgent action to combat climate change and its impacts.
(気候変動とその影響に対する緊急的な対策を取ろう)
具体的な、という語はここにもありませんが、urgent(緊急の、重大な)という語のニュアンスをとらえた表現かもしれません。
目標14「海の豊かさを守ろう」
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「海の豊かさを守ろう」は、 “Life below water” を訳したものです。
below は「~の下」を表す言葉で、 “Life below water” は直訳で「水の下の生命」ということになります。
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日本語訳では「生命」に限定しない書き方ですが、「海の豊かさ」には「生命」も含まれるという解釈だと思われます。
目標15「陸の豊かさも守ろう」
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「陸の豊かさも守ろう」は、 “Life on land”を訳したものです。
基本的な構造は目標14と一緒です。だから「陸の豊かさ “も” 守ろう」となっているのでしょう。
目標16「平和と公正をすべての人に」
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「平和と公正をすべての人に」は、 “Peace, justice and strong institutions” を訳したものです。
peaceが「平和」、justiceは「正義」は大丈夫だと思いますが、難しいのは institutionsでしょうか。
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institution は意味が多岐にわたるのですが、基本的なイメージは「規模の大きな機関」です。
○○機構といったような組織は institutionにあたることが多いと思います。
こうした大きな組織・機関に誰でもアクセスできる環境をつくることが目標16の意味です。
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
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「パートナーシップで目標を達成しよう」は、 “Partnerships for the goals” を訳したものです。
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この目標の英語表現で気を付けるのは partnerships と複数形になっているところです。
考えてみれば当然の話で、どこかひとつのパートナーシップが結ばれたからといってSDGsの目標全てが達成されるわけはなくて、さまざまな協力があって初めて達成されるものだからです。
こういう少し抽象的な単語だと複数形にするのを忘れがちなので注意しましょう。
まとめ
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今回は、SDGsの目標の日本語と英語を比較してみました。
日本語訳も相当考えて作られているのがわかりますが、英語だと少しニュアンスが違って感じられる部分もあったと思います。
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たまに、「英語ではどう書かれているのかな?」と意識すると、視野が広がるかもしれません。
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