地産地消(ちさんちしょう)という言葉を聞いたことはありますか。
地産地消とは、「地」元で生「産」された物を「地」元で「消」費するという意味です。
フードマイレージ(食品輸送にかかる温室効果ガスの測定)という言葉とともに、20年ほど前に流行した言葉です。
地産地消が今、あらためて注目されています。
その理由はSDGs(持続可能な開発目標)です。
今回は、地産地消の意味やメリットを図解も交えて解説し、SDGsとの関連性についてもみていきたいと思います。
地産地消とは?
農林水産省によると、地産地消とは「地域で生産されたものをその地域で消費すること」を基本とした活動を指すそうです。
スーパーに買い物へ行くと、魚や野菜、肉に産地が記載されていると思います。
長崎県諫早市に住んでいる私の街ではたとえば、以下のようなものが売られています。
- フィリピン産のバナナや、オーストラリア産の牛肉など、海外から来たもの。
- 北海道産のジャガイモや、長野県産のキャベツなど、県外から来たもの。
- 長崎県島原市のそうめんなど、県内だが市外から来たもの。
- 地元コーナーに売っている生姜など、県内かつ市内から来たもの。
地産地消が上記①~④のどれを指すのかということについて、厳密な区分はありませんが、一般的には④のような自分の住んでいる市町村で作られたものと考えることができます。
もちろん、時と場合によっては②や③を地産地消ということができる場面もあると思います。
たとえば、旅行先で「地産地消だ」というときには、厳密にはその村・市や県でなくても、同じ「経済圏」であればよいとすることが考えられます。
とはいえ、そこまで対象を広げると話がややこしくなるので、本記事の地産地消は④のような、住んでいる地域に根差した商品を消費することとして考えていきたいと思います。
地産地消のメリット・デメリット
地産地消という言葉にはなんとなくポジティブな響きがありますが、メリット・デメリットにはどういう点があるでしょうか。
メリット
メリットといっても、立場によりさまざまなケースが考えられるので、ここでは①消費者、②生産者、③それ以外として、紹介していきます。
①消費者のメリット
まず消費者のメリットとしては、旬のものを手に入れられる点が考えられます。
しかも、地元のものは輸送費が少なく済むので、値段が安くなりやすいという傾向もあります。
また、生産者が身近な存在なので安心感も生まれると思います。
さらに、地元ならではの食材や、地元の特産を知ることができるので、文化理解やコミュニケーション(調理方法を共有する)などにもつながることもメリットと考えられます。
②生産者のメリット
生産者のメリットとしては、輸送費などの経費が削減できることで、利益の確保がしやすくなります。
とはいえ、消費者のメリットで挙げたように、経費削減は販売価格の低下につながる恐れもあるので注意が必要です。
また、不揃いや規格外の商品を販売しやすいというのもメリットです。
先日、「闇落ちトマト」という名前で、一部が黒く変色してしまったトマトを販売したら評判を集めたというニュースがありました。
こうした「見た目の悪い」商品は、品質基準の厳しいスーパーなどで見かけることはありませんが、直売所や市場、地産地消コーナーのあるスーパーなどでは販売されていることがあります。
③その他のメリット
「地元のものを食べたい」というニーズをうまく利用することで、観光などに繋げることも期待できます。
これは、地元産を売りにしたレストランなどが、代表例です。
また、輸送コストが少なければトラックや飛行機の使用も減り、温室効果ガスの発生を抑えることもできます。
ただし、輸送で発生する温室効果ガスの量は、食品そのもののライフサイクルの中の10%に満たないという研究結果もあるので、過信は禁物です。
食品やサービス全体に使われる温室効果ガスの量を測定する、カーボンフットプリントについては、別に記事も書いているのでよければ参考にしてください。
デメリット
地産地消は良い面ばかり強調されますが、デメリットもあります。
それは、消費者のニーズを完全に満たすことはできないという点です。
たとえば、バナナを食べたいと思っても日本国内ましてや自分の住んでいる地元で生産されたバナナを手に入れることは難しいです。
このように、ある食材を食べたいという欲求を必ずしも満たせないのは欠点といえます。
とはいえ、地産地消「だけ」を目指すのではなく、無理のない範囲で地産地消に取り組むことで、このデメリットは回避できます。
地産地消とSDGs
地産地消が改めて注目を浴びている理由としてSDGsとの関連性があると冒頭で説明しました。
SDGsとは「持続可能な開発目標」と呼ばれているもので、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき17のゴールです。
中身は「貧困をなくそう」や「ジェンダー平等を実現しよう」「海の豊かさを守ろう」といったものがあります。
地産地消はこの中でも、輸送コストを下げ、温室効果ガスの発生を抑えるので目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献すると言われています。
しかし私は、地産地消の真の価値は別にあると考えています。
それは、地元経済の活性化です。
SDGsの目標11に「住み続けられる まちづくりを」というゴールがあります。
自分が住む市町村でつくられたものを消費するというサイクルができあがれば、地元経済が活発になります。
経済が活発になれば、人が集まるようになり、人が集まればサービスの質があがります。
この循環は、住みやすいまちとなって、私たちひとりひとりの生活の質(QOL)向上にも役立ちます。
実際にSDGsの目標11には、以下のターゲット(ゴールを細分化したもの)が設定されていて、これは地産地消とマッチングしたものといえるでしょう。
11.a 各国・地球規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部、および農村部間の良好なつながりを支援する。
まとめ
地産地消はシンプルな取り組みですが、その効果は意外にも多岐にわたります。
スーパーで買い物をするとき、レストランでメニューを選ぶとき、「地産地消」というワードを少し意識してみるのはどうでしょうか。
少しずつの積み重ねが、大きな力になっていくと思います。
SDGsについて書いた記事です!
コメント