ESD(持続可能な開発のための教育)というのは、2000年代初頭から日本の教育現場で実践されてきた教育です。
そんな中、近年はSDGs(持続可能な開発目標)という言葉話題になっています。
両方に「持続可能な開発」という言葉が入っていることで、こう感じている人も少なくないと思います。
ESDとSDGsって何が違うの?新しく教えなおさなきゃいけないの?
結論から言えば、ESDとSDGsは共通する点が多いので、今までどおりESDを推進していれば問題ありません。
とはいえ、両者の関係をきちんと整理して理解しておかないと、余計な混乱を生んでしまう可能性があります。
そこで今回は、ESDとSDGsの関係性について詳細に解説していきたいと思います。
【本記事の参考サイト】
ESD(持続可能な開発のための教育)推進の手引
文部科学省公式HP
外務省公式HP
ESDとは?SDGsとの違いについて
ESDとSDGsの大きな違いは、ESDが「教育」を指すのに対し、SDGsは「目標」であるという点です。
これだけでは少しわかりづらいので、ESDとSDGsそれぞれについて、その成り立ちや理念を詳しく見ていきます。
ESDとは
ESDは“Education for Sustainable Development” の略で、日本語では「持続可能な開発のための教育」と訳されます。
日本が2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で提唱したことをきっかけに、2005年から2014年の「国連持続可能な開発のための教育の10年」が掲げられ、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関) が中心となって国際的に推進してきました。
ESDが目指しているのは、持続可能な社会づくりを構成する概念を「6つの視点」で分析・課題抽出し、課題を解決する「7つの能力・態度」を身につけることです。
「6つの視点」は具体的に以下のものを指します。
- 多様性(いろいろある)
- 相互性(関わりあっている)
- 有限性(限りがある)
- 公平性(一人一人大切に)
- 連携性(力合わせて)
- 責任制(責任を持って)
「多様性」「公平」「責任を持って」など、SDGsの目標でも大事なキーワードが詰まっています!
課題解決に必要な「7つの能力・態度」は以下のものを指します。
- 批判的に考える力
- 未来像を予測して計画を立てる力
- 多面的・総合的に考える力
- コミュニケーションを行う力
- 他者と協力する力
- つながりを尊重する態度
- 進んで参加する態度
上記に挙げた「6つの視点」と「7つの能力・態度」を身につけるための教育がESDであり、学校経営や授業といった教育の現場に反映されてきました。
SDGsとは
SDGsは“Sustainable Development Goals” の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
SDGsは2015年に開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、持続可能でよりよい世界を目指す2030年までに達成すべき国際目標です。
具体的には以下の17の目標から成り立っています。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
それぞれの目標からわかるとおり、SDGsが目指しているのは「私たちはどのように生きるべきか」という行動指針であり目標です。
ESDとSDGsの関係
ESDは「教育」でSDGsは「目標」ということはわかったけど、関係性はあるの?
SDGsのターゲットにESDを意識したものがあります!
SDGsには17個の目標の下に169のターゲットがあるのですが、実はSDGsのターゲットの中に、ESDと非常に関連性の強いものがあります。
SDGsには前身となるMDGs(ミレニアム開発目標)というものがあったのですが、そこでは「教育機会を増やすこと」が中心に論じられてきました。
その点、SDGsは教育機会だけでなく「教育の質」にも言及している点が画期的です。
また、SDGsの視点からESDはどう捉えられているのかというと、2017年に開かれた国連総会において「ESDはSDGs実現の鍵である」と表現されています。
SDGsはひとつひとつの目標が独立しているのではなく、それぞれが相互に影響を与えるものと定義されており、教育(目標4)においても例外ではありません。
つまり、ESDを推進することがSDGsの達成にとっても大事というわけです!
ESDとSDGsのこれから
ESDとSDGsが互いに関係する中で、教育現場ではこの2つにどのように取り組んでいけばよいでしょうか。
ひとつの答えとなるのが、ESDを基礎(理論)として学び、SDGsを目標として実践していくという分け方です。
ESDは教育ですから、実例などを通してディスカッションし、先に述べた「6つの視点」や「7つの能力・態度」を学ぶことが大切です。
一方でSDGsは、学んだ「6つの視点」や「7つの能力・態度」を、実社会で実際に使うことが要求されます。
そういう意味でESDとSDGsは「理論」と「実践」という風に置き換えて考えることができるでしょう。
現段階でESDを中心に教えていたのであれば、ESDがSDGsにどう繋がっていくのかを示すのが、今後の教育で必要なことだと思います。
まとめ
今回は、ESDとSDGsの関係性についてまとめてみました。
SDGsよりずっと前から取り組まれていたESDですが、SDGsのおかげで今ふたたび大きな注目を集めています。
そんな時代だからこそ、ESDとSDGsの共通点や違いをきちんと理解することが、より一層求められると思います。
この記事の内容が唯一の正解ではありませんが、ESDとSDGsの違いがわからず苦労されている方は、いったんESD=教育理論、SDGs=目標の実践と考えてみることをオススメします。
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