社会学って、なんだかよくわからない学問だと思いませんか?
私は大学時代、会計学を専攻していました。
「会計学」ってめちゃくちゃ明快な名前ですよね。あ、会計を勉強してたんだなーってわかるじゃないですか。
でも「社会学」は…?
「社会を勉強してたんですねー」ってなんじゃそりゃ、って感じです。
さて、われらがWikipedia先生によると、社会学とはこう定義されています。
社会学(しゃかいがく、仏: sociologie)は、社会現象の実態や、現象の起こる原因に関するメカニズム(因果関係)を統計・データなどを用いて分析することで解明する学問である[1][2]。その研究対象は、行為、行動、相互作用といった微視的レベルのものから、家族、コミュニティなどの集団、組織、さらには、社会構造やその変動(社会変動)など巨視的レベルに及ぶものまでさまざまである。思想史的に言えば、「同時代(史)を把握する認識・概念(コンセプト)」を作り出そうとする学問である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
うーん、わかるような。わからないような。
とにかく、社会にまつわることを取り扱うみたいです。
しかし、こんなざっくりした説明では、社会学をこれから学びたいと思う人は困ると思うんです。
そこで今回は、
なるほど、社会学ってこういうことを扱うんだ!おもしろそう!
と私が感じた本を紹介したいと思います。
- 社会学・差別問題に興味のある人
- 社会学部に進学する人、進学希望の人
今回紹介する本
さっそくですが、紹介したい本はこちら。
『マイノリティ問題から考える社会学・入門 ~差別をこえるために~ 』という本です。
入門と書いてあるとおり、想定読者は高校生~大学1年生くらいで、平易な文で書かれています。
また副題からわかるとおり、差別問題から社会学を考える本となっています。
それでは、この本のおすすめポイントについて紹介していきます。
おすすめポイント
本当に最初から最後までおすすめな本書なのですが、ここではギュッと3つに絞ってオススメしたいと思います。
その3つとはズバリ、
- 扱う幅が広い
- 質が高い
- 内容が新しい
ひとつひとつ紹介します。
差別問題について網羅的に解説されている
まず、扱っている差別問題の数が圧倒的に多いです。
この本たった1冊で、以下のマイノリティ問題を取り扱っています。
- 女性
- 障害者
- 外国籍の子供
- 異民族
- 日系移住者
- 在日コリアン
- 部落出身者
- ハンセン病者
- 被爆者・被曝者
- 難民
入門書でありながら、これだけ幅広く差別問題を取り上げている本はないと思います。
しかもただ差別があるということを簡単に取り上げているだけでなく、差別の背景、現状の問題点、今後の展望などしっかり学べるようになっています。
執筆者&参考文献が多い
しっかり学べるようになっているのには理由があります。
この本の執筆者は1人ではありません。
表紙に書かれているのは編者2名ですが、その中身はなんと14名の執筆者による超大作なのです。
さらに驚きなのは参考文献の量で、参考文献だけで12ページにも及びます。
これだけの人と文献から書かれているだけあって、内容がめちゃくちゃ濃いです。
私はビジネス書などは1冊1~2時間程度で読んでしまうくらい読むスピードには自信がありますが、この本は読み切るまで1週間近くかかりました。
それくらい、学ぶことの多い(新しい気づきの多い)本でした。
ポストコロナ時代にも対応
それから、この本は刊行が2021年2月となっていて、最新の情報が盛りだくさんです。
随所で新型コロナウイルスのパンデミックにも触れられているので、ポストコロナ時代を考えるのにも役立ちます。
昨年からのパンデミックは、私たちのこれまでの常識をいろいろと覆してきました。
急速に進んだグローバル化に待ったをかけた一方、オンラインミーティングなど新しいコミュニケーションのありかたを提示したのが良い例だと思います。
言葉は悪いですが、コロナ前の情報のみで構成された本では、これからの時代を考えるには不十分だと私は感じています。
その点、本書はこれから来る新しい時代に対応している最先端の本だと思います。
この本を読んで私が考えたこと
私がこの本で最も考えさせられたのは、差別行為を認識することの難しさについてです。
本書で取り上げられた例で非常に興味深かったものを取り上げてみます。
授業中に私語ばかりして何度注意してもやめない学生に向かって教師が言い放った「何度言ったらわかるんだ,君はつんぼなのか〔そうではないだろう〕」という発言
マイノリティ問題から考える社会学・入門 P.279
これは、ろう者と健常者というマイノリティ・マジョリティ関係において、マジョリティである健常者から同じくマジョリティである健常者へ向けられた発言が差別行為なのかという問題を取り上げたものです。
もし差別行為がマジョリティ(差別者)からマイノリティ(被差別者)に直接及ぶ蔑視や排除を指すのだとすれば、上記の例は差別ではなくなってしまいます。少なくともこの場にマイノリティ(被差別者)が存在しないわけですから。
しかし、現代を生きる私たちは上記を差別だと感じるわけです。この理由はなんでしょうか。
本書は、差別行為が「差別者」と「被差別者」以外に「共犯者」という第三者が存在することによって成り立っていると説明します。
先ほどの例でいえば、先生(差別者)は、生徒を「被差別者」ではなく、「共犯者」にしようとしていたということです。
つまり、先生はその場にはいないろう者を見下し他者化する一方で、生徒をマジョリティとして同質化しようとしていたということになります。
現代における差別の多くは、実はこうした形であることが多いことを本書は指摘しています。
たとえば、男性だけが集まった会社の飲み会で、女性を蔑視する発言をしていたり。
たとえば、日本人だけが集まった学校の教室で、外国人の悪口を言ったり。
このような行為は、まだまだこの世の中に存在していると思います。
また、こうした発言や行動に対し「本人(被差別者)がいないからいいか」と考えている人が多いのも事実だと思います。
しかし、このような発言・行動の積み重ねが社会の雰囲気を決めてしまっているのもまた事実です。
まとめ
本書が取り上げている問題は、なかなか簡単に解決できることではありません。
しかし私たちひとりひとりが、しっかりと差別問題に向き合っていく姿勢が大事だと私は考えています。
本書は社会学の入門として書かれた本ですが、社会学を学ぶ人だけでなく、現代に生きるあらゆる人に読んでほしいと思える一冊でした。
差別問題について考えるきっかけになる1冊でした。
同性愛について考えさせられた映画をレビューしています!
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