先日、NHKスペシャル【ジェンダーサイエンス (1)「男X女 性差の真実」】という放送を見ました。
その中でモザイク脳という面白い言葉がでてきたので、忘れないうちに考えをまとめておきたいと思います。
「モザイク脳」というのは、いわゆる「男脳」「女脳」に対するアンチテーゼ的な概念で、男脳・女脳両方の要素を併せ持つ人のことです。また、ほとんどの人(番組内では90%と表現)がモザイク脳であるというのがこの放送で明らかにされていました。
この「モザイク脳」という考え方が、社会におけるさまざまな差別問題を考えるときに役立つフレームワークだというように私は感じました。
そんなわけで今回は、放送であった「モザイク脳」の概念を解説しつつ、私が感じたことを書いていきます。
モザイク脳とは
ひと昔前のベストセラーに「話を聞かない男、地図が読めない女」という本がありました。
- 男性が女性よりコミュニケーション能力に劣る傾向がある(話を聞かない)
- 女性は男性より空間把握能力が低い傾向がある(地図が読めない)
といった男女の脳における性差を解き明かす本です。
上記のような例を挙げると、
たしかに、男性って話聞いてないよね
女性って運転が下手な人が多いよね
みたいに感じる人もいると思いますし、反対に
話を聞くのが上手な男性を知ってるよ!
女性で運転が上手な人だっているよ!
と感じる人もいると思います。
今回のNHKスペシャルでは、脳に性差があることは認めた上で、それは個人に当てはめることはできないと紹介していました。
これはどういうことか説明します。
「男脳」「女脳」が存在するのかを調べるため、被験者の脳をいくつかの部分にわけて数値を測定するという実験が行われるところから話は始まります。
たとえば記憶力に関係する部位、性自認に関する部位、といった具合です。
すると、全体として男性のほうが空間把握能力に優れる傾向があり、女性のほうが共感力が高い傾向があることがわかりました。
ここまでであればただの「男脳」「女脳」の話ですが、取ったデータを個人ごとに集計してみると、驚きの結果が出たというのが今回の放送の重要なポイントです。
なんと、脳の全体がいわゆる「男性脳」あるいは「女性脳」とはっきりした傾向が出るのは被験者の約10%ほどだったそうです。
裏を返せば、90%近くの人は「男性脳」的な要素と「女性脳」的な要素を併せ持つ「モザイク脳」であることがわかったわけです。
ここから導き出せるのはつまり、こういうことです。
脳の性差は存在する。でもその性差を個人に当てはめることはできない。
差別問題を考えるフレームワーク
「脳の性差は存在する。でもその性差を個人に当てはめることはできない。」
文章にしてみると、とても難しいことのように感じますが、実はそれほど難しい話ではないと私は考えています。
たとえばこの問題を、「脳」ではなく「身長」で考えてみるとわかりやすいと思います。
男性は女性に比べると、身長の高い人が多い傾向があります。
しかし、世の中の男性が全員、女性より背が高いわけではありません。
全体の傾向として差があったとしても、それを個別に当てはめることはできないというまさに典型例です。
こう考えてみると世の中には、単なる傾向に過ぎないにもかかわらず、あたかも個人の属性であるかのように扱うことが散見されます。
たとえば…
- 長子(お兄ちゃん・お姉ちゃん)だからしっかりしている
- 関西出身だから話が面白い
- ゆとり世代は出世を望まない
挙げた例も、単なる傾向に過ぎません。(もしかしたら傾向すらないかもしれません)
こうしたカテゴライズは、一般論として話をする程度に留めておくのが無難です。
言い換えれば「Aさんは、関西出身だから面白いんだね~」という使い方はやめましょう、ということです。
「関西出身者に面白い人が多い」という傾向と、「関西出身者のAさんが面白い」という事実に因果関係はないからです。
Aさんはもともと口下手だったのをコンプレックスに感じて、努力して面白い話ができるようになったかもしれないのに、それを勝手に「関西人だから」と決めつけるのは確かに良くない。
まとめ
今回は、NHKスペシャルで取り上げられた「モザイク脳」という概念を知り、そこから私が学んだことについて記事を書いてみました。
伝えたかったのは、ある属性を取り上げそこから何か決めつけをしてしまうことの危険性です。
正直、私自身も例に挙げたようなカテゴライズ(例:関西人は面白い)を、意識せず個人に当てはめてしまっているときもあると思います。
今回の「モザイク脳」の学びで、今後はより一層気をつけたいと感じました。
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